歩き疲れて、気持ち悪いのか?
いや、疲れは心地いい。
では、何故?
不安な気持ちを押し殺し、成美は、皐月と共に、お客が出来るだけ少なく、ゆっくりと
話ができるような店を選んで入って行った。
注文を済ませると、皐月が口を開いた。
「ちょっと、立ち入ったこと、聞くけど。嫌ならはっきり言って?」
「はい。」
「給料はどの位?」
「ママからは、1万5千円って。」
「そう。まあ、普通ね。じゃあ、日本語以外に話せるのは英語だけね?」
「え?どうして私が、英語が喋れるって、知ってるんですか?」
「あそこでは、採用条件のひとつなの。最低限のね。フランス語やドイツ語、中国語だって
話せる子はいるわ。順番に給料が加算されていくの。今、最高で一日5万位もらってる子もいるわ」
「へぇ〜」
「それだけでは、ないのよ。指名料や同伴手当て、お客様が入れるボトルの値段で、バックマージン
が増減するし。いろいろあるわ。」
「じゃあ、一番稼いでる人は、一月どの位になるんですか?」
「まあ、あくまで予想だけど・・・
7〜800万くらいかな。」
「え〜?なんで、そんなに?」
「KINGはね、高級社交場なの。お客様はまず、サラリーマンは単独では入ることが、出来ないの。
重役さんの指令で、接待オンリーとかよ。だから、アメリカ人は当たり前。
各国の優秀なビジネスマンや経営者が安心して、飲める場所。
女性も来るわよ?政治家の奥様とか、気晴らしに。
用は、お忍びでお酒を飲んでても、安心できる店。かな。」
「そんなに、すごい店なんですか・・・私、何も知らなくて・・・」
「ママは、あなたに何も教えて無いのね。一応、今、私が話したことぐらいは、面接で
教わるんだけど。」
「私が友人の娘だから?」
「いえ。あのママは、そんな事で差別なんかしないわ。もっと、他に理由があると思うわ。
何か心当たりはない?」
「いえ。なにも・・・だって、いきなり母からあそこで働くように言われただけなんですもの。」
「え?お母さんから?また、何故?」
今日は、二人ともよく驚く日。
成美はためらいながらも、皐月に話した。
まだ会ってから2度目なのに。なぜか皐月には話したかった。
「そんな事情が・・・」
杏仁豆腐が運ばれてきたころ。
二人は、ただ黙ってお互いの顔をみていた。
どちらかが、何かを見つけてくれるのを期待しながら。
そんな雰囲気の中、皐月が重い口を開いた。
「今日は、どうするつもり?」
「迷ってます。」
「どんな風に?」
「何か、見えてきている気がするんですが。靄がかかったように、ハッキリとしないんです。
だから、それがハッキリしてから・・・とも。それより、成り行きに任せようか・・・とも。」
「成美ちゃんの性格からして、成り行きに座布団1枚!」
突然の提案に思わず吹き出す。
杏仁豆腐を片付けると、皐月は
「決まりね。私も付き合うわ。成美ちゃんは、とてもあの店に合ってると思うの。
単なる勘だけど。でも、当たるのよ?」
「何故、そんなに私のために?」
「あんたって、ほっとけないのよ!そんな子なの!たいして歳も違わないけどね。
男性からみても、そうじゃないかしら・・・」
皐月と話しても、昨夜、母に言われた答えもハッキリしない。
多少、失望はしたが、それなら行動あるのみ!
「じゃあ、お互い自宅で、出勤の準備ですね。」
「そうね。いい美容院紹介するわ。少しイメチェンしない?」
「いいですね、それ。今から行きますか?」
「OK!」
二人は意気揚々と、中華料理店を後にした。
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2006年01月27日
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